「ラシッドの真実、その3」
こんにちは、松山真由美です。
今日は、パピーウォーカーさんに再会してからその後、ラシッド君がどうなったのかをお話します。
何がどうなったのかというと、とにかく、頂いたぬいぐるみが嬉しくて、毎日大はしゃぎしているのです。
それも、ただの大はしゃぎではなく、このぬいぐるみは、噛むとピーピーなるのですが、ラシ君はそれを使って喋れるようになったのです。
初めは「ブーブー」と文句だけだったのが、「バビ!」と返事はもちろん、最近は「ヒャヒャヒャヒャー」と笑えるようにもなりました。
こうして、パピーウォーカーさんに会ってから、すっかり赤ちゃん返りしたラー坊は、毎日「バァブー!バァブー!」と嬉しそうに喋っています。
そうなのです、今年の神様からのクリスマスプレゼントは、「魔法の口」だったのです。
そして次の週、ラシ君とボランティアさんと小学校に盲導犬のお話をしに行ってきました。
あんなに赤ちゃん返りしていたのにさすが盲導犬!メリハリの魔法が得意なラシ君は、本当にすばらしかったのです。
今回は3年生全員だったので、体育館での授業となりました。
初めに先生が、
「ラシッド君は今お仕事中なので、目を見たり呼んだりしたらダメですよ。みんなと遊びたくなったらダメなので気が散らないようにしましょうね。」
と、話してくれました。
すると、素直な子供たちは、自分の手で目を隠したり、下や横を向いたりして犬を見たいのを必死で我慢してくれたのです。
「なんて素直でかわいいのー!」
と、独りで感動しながら、前回この小学校を訪問した後に書いた「ほっこり訓練日記26」のことを思い出しました。
ちなみに、この訓練日記ですが、26話から文章内に、私の思いをギュッと凝縮した「ほっこり川柳」を書いているのですが、お気づきでしたか?
はじめの方は「」でくくっていたのですが、誰も気づいてくれないので、〈〉でくくっています。
その時に初めて書いた〈子供には 素直の花が 咲いている〉を、思い出し、本当にそうだなぁとまた胸がじーんと熱くなりました。
そして、前回は、3分間の暗闇体験をしてもらったのですが、今回は体育館だったので、二人組になってもらい、みんなで手引き体験をしました。
「きゃー!怖いー!」
など大騒ぎでしたが、少しでも、見えない人の気持ちと、ラシ君の大変さがわかってもらえたかな?
それから、この一年間で気づいた盲導犬の秘密や、盲導犬が育つのは、なぜ難しいのか、なぜ目を見たり呼んだりしたらダメなのか、なぜ盲導犬はどこにでも一緒に入れるのか、なぜ盲導犬は、道の左側に沿って歩くのかなど、盲導犬に関する未知の話をたくさんしました。
子供たちは、ラシッドがみんなの後輩の2年生で、まだまだ勉強中なんだということがわかり、親しみを感じてくれた様子。
最後に、ラシッドと二人で舞台に上がる階段の、上り下りを披露してから、みんなの周りを歩いたのですが、その時すごいことが!
あともう少しでゴール!という時のことです。
ラシッドが突然、子供の方に曲がったかと思えば、男の子の顔を、ベローンと舐めたのです。
その瞬間ドッカーーン!!
「うわーー!なめたー!かわいいー!いいなー!」
それまでの、お仕事の邪魔をしてはいけないという、ちょっぴり張りつめていた空気が解けて、全員が大喜び。
普段私の顔は一切舐めたりしないので、その予想外の行動に、私が一番ビックリ!
「すごい、ラシッド!ご愛嬌してる!」
こうして天才ラシッド君は、一瞬でみんなを笑顔に変えたのです。
「やっぱりすごい!犬も子供もみんな、素直の花が咲いているから、こんなにも全力で楽しめるんだなぁ!」
と、お話をしにいった私の方が勉強になりました。
〈枯れないで 素直の花は 永遠に〉
こうして、100人の子供たちから、盲導犬の理解が、何倍にも広がってくれたら嬉しいなぁ!
大人になっても、今日のことを忘れないで、人の役に立つ優しい人間になってほしいなぁ!
そして、今回の小学校での立派なラシ君を見ていて、パピーウォーカーさんから頂いた愛は、どんなに貴重な存在だったのか、どれだけ意味が大きいのかがよくわかり、さらに感謝の気持ちが止まらなくなりました(^O^)